振動特性の対比に関する報告

1/振動波形データ計測と比較・解析 受けた振動そのものの波形を計測し、比較・解析を行う。

この実験で計測される実時間波形データは、振動を与える瞬間を「当たりを感じた瞬間」として想定し、当たりの振動がグリップヘッド(CH1)からグリップ握り部分(CH2)へ時間の変化と共にどのように変化していくのかというデータを計測する。計測した振動は実時間波形グラフに表され、このグラフを元に比較・解析を行う。

『振動実時間波形グラフ』

時間tの関数である信号は、縦軸⇒振幅(加速度)、横軸⇒時間といったグラフで描くことができます。

振動の実質的な実波形データで、時間の経過とともに振動どのように変化しているのかを表します。

1) CH1で計測した振動がCH2でどのように変化しているかをそれぞれ検証する

当社グリップ製搭載ロッド

▲CH2(手元)では振動が増加している部分が多い。

他社グリップ製搭載ロッド

▲CH2(手元)では振動が減衰してしまっている。

2) CH1とCH2で計測した振動波形のグラフを重ねてみる事で、それぞれの振動特性を比較する

当社グリップ製搭載ロッド

▲CH1とCH2の波形の重なりを見るとCH1(ロッド先)よりもCH2(手元)が大きくなっている部分が多い事が解る
▲つまり増幅している

他社グリップ製搭載ロッド

▲CH1とCH2の波形の重なりを見ると、CH1(ロッド先)よりもCH2(手元)が小さくなっている事が解る
つまり増幅していない

■結 果

当社製グリップ搭載ロッドと他社製とを比べてみると、当社製ではCH2の実波形が増幅されている事がはっきりと解り、他社製ではCH2の波形はCH1よりも減衰している事が解る。通常ロッド先端から伝わる振動は、CH1からCH2へと伝達される際にリールシートやリール等質量の大きな物質の抵抗力によって減衰してしまうが、当社製グリップ搭載のロッドでは増幅されている。これは共振現象と思われ、当社ロッドのブランク拘束支持方法やグリップ材質の違いによる構造上の違いから、共振のような現象が起こっている事が解る。先端から与えられた振動はブランクを伝わりCH1からCH2へと伝達される。受けた振動はブランクとリールシート双方を伝わりCH2ではリールシートから伝わる振動とブランクから伝わる振動が相互に影響し合いながらCH2では振動が増幅されている結果となった。

「振動基礎知識」

リールシート部材の質量が小さくなったり、硬性が高くなると共振する周波数は高くなる。ジュラルミン製のグリップと樹脂製のグリップでは、その硬性の違いからそれぞれの持つ固有振動周波数は異なり、硬性の高い当社製グリップは、高い固有振動周波数を持つ事になる。また、共振とはこの場合、ジュラルミンリールシートが持つ固有振動数と外部から与えられた振動周波数が共鳴し発生する振動の事で、同じ周波数を持つ振動運動が重なる事によって振動が増幅する。固有振動周波数の高い当社グリップでは共振周波数が高くなり、樹脂製グリップでは低くなる。

  2/振動波形データ計測と比較・解析周波数スペクトル分析による比較・解析 振動波形に含まれる周波数成分の比較・解析を行う。

この実験では、周波数のスペクトル(周波数成分)を計測する事で、周波数特性を調べることができる。最も振動の波が大きくなる周波数成分を分析する事ができ、この振動のピーク周波数を調べる事により、グリップ部(CH1)からグリップ握り部(CH2)へ振動が伝わる際に、ブランクの拘束方法の違いによってどの周波数が高く、どの周波数が低いのかという事を含め、減衰している部分や、共振している部分が解る。

1) CH1とCH2で計測した振動の周波数スペクトルからそれぞれの周波数特性を検証する。
2) 振動伝達比グラフで振動伝達比の比較・解析を行う。

『周波数スペクトルって?』

種々の物理量を観測して得られた信号は、時間tの関数としてx(t)、y(t)などと表現できるのですが、信号の性質を理解する上では、信号にどのような周波数の成分が含まれているかを知ることが重要になります。信号を各周波数ごとにその成分の振幅と位相を与えて表現すること、すなわち横軸を周波数とし、その周波数成分の大きさを縦軸として描いたものが、周波数スペクトルです。

1) CH1とCH2で計測した振動の周波数スペクトルからそれぞれの周波数特性を検証する

当社グリップ製搭載ロッド

全体的にCH1及びCH2には同じ波形の周波数成分が含まれている事が解り、振動のピーク周波数が同じである事が解る。特に1.4khz以上の高い周波数帯域では、全体的に振動の大きさとして高いレベルで維持されており、CH1よりもCH2が上回っている部分が多い。CH1&2のレベル的な変化を細かく見ると、0.6~0.9khzまではCH1が高くCH2が低い。 その後0.9~1.1khzの間ではCH2がCH1を上回るが、再び1.1~1.25khzまでCH1が高くなる。 このように相互が補いながら、高いレベルでの振動ピークを維持している。 また、CH1及びCH2で形成された同波形の振動ピークの大きさはCH2がCH1を大きく上回っている事が解る

他社グリップ製搭載ロッド

▲ 全体的にCH1及びCH2とではCH2のピークが出ていない事が解り、全体のレベルも低い。 特に1.4khz以上の高い周波数帯域では、全体的に振動の大きさが低くなり、CH1よりもCH2が下回っている部分が多い。 高周波数帯域では、CH1で形成されている振動のピーク波形がCH2ではほとんどなくなっている。 また、CH2の振動ピークがCH1を上回る事は無い事からCH1から伝わる振動がCH2で減衰していると言える。

■結 果

VB製ではCH2の振動がCH1よりも大きくなっている事に加えて、CH1の波形がCH2で忠実に再現されている事から、ほぼ同じ周波数成分を含んだ振動が伝わっていると言える。この結果CH1の振動がリールシート部で拘束されずに共振増幅されている事が解る。 一方他社製グリップ搭載のロッドは、CH1で見られる振動ピークがCH2ではほとんど見られない事から、振動はリールシート部で減衰されていると言える。当社グリップと他社グリップの内部支持構造の違いによる振動の周波数特性が明確に表れている結果となった。

2) 振動伝達比グラフで振動伝達比の比較・解析を行う。

振動減衰率グラフ

CH1及びCH2の周波数スペクトルの比を算出(CH÷CH2)し、グラフ化したもので、どの周波数成分がどのように減衰したり増幅しているかを示します。グラフラインが1.0を超えるとCH1よりもCH2が上回っている事を示し、逆に1.0ラインを下回っているとCH2が減衰している事を表します。

当社グリップ製搭載ロッド

▲当社ロッドは減衰率が低く全体的に1.0ラインを上回っている部分の周波数が多い事が解る。特に1.4KHZ~2.7KHZの高い周波数帯域全域において1.0ラインを超えた高いレベルが維持されている事が特徴的。 1.0ラインを超えている周波数は、88~340HZ・400~410・440~470・490~510・560~590・860~990・1430~1820・1840~2670となる。

他社グリップ製搭載ロッド

1.0ラインを上回っている部分の周波数は88~160HZ・180~210・ 240~250・ 272~360・520~580・600~630・1040~1200・1310~1360。

■結 果

実際に、他社製グリップと自社製グリップのスペクトルを計測し振動伝達比を求めると、当社製品は1.4khz~2.6khzまでの幅広い周波数帯域で振動が増幅され、共振している事が解る。これは、ジュラルミンという固有振動周波数の高い金属物質を素材としてリールシートに使用しているだけでなく、シート先端部でロッドを強固に1点支持させブランクをシート内で非接触構造とする事で質量の大きなリールを装着した場合に、ブランクから伝わる振動がリールシート部で減衰されずにCH2まで伝達する事を可能としている。一方他社製品では低い周波数帯域では一部上回っているものの、1.1khz付近より高い周波数では全て減衰している。これは樹脂製のような固有振動数(共振周波数)が低い素材である事に加えて、リールシート内部でブランクが拘束されてしまい、質量の大きなリールを装着した場合に、リール・シート・ブランクが一体となりより大きな質量となる事でCH1から伝わる振動を大きく減衰させている。  

実 験 結 果

実験1・2の結果から得られた数値を元に検証すると、当社グリップ製搭載ロッドは、幅広い周波数帯域の振動を感知する事が出来る理想的なロッドである事が実証されている。従来のロッドでは樹脂製グリップにより限られた狭い周波数帯域の振動しか感じる事が出来なかったが、VAGABOND金属グリップロッドでは幅広い周波数帯域を含む微振動を感じる事が出来、手元で共振させている。また、当社のロッドは広帯域な特性を持つ事から事実上、他社ロッドでは感じる事の出来ない周波数帯域の当たりを取る事が出来ると言える。