番外編 その1 事件遭遇

州でNO2と言われるルアーコレクター・あのマイク亭訪問の後、ひたすらショーケースや古物を集めては小さな町の移動を繰り返していた時の事。 その日も夜遅くなり仕方なく少し治安の悪そうなダウンタウンのモーテルで泊まる事になった。くたびれてシャワーの後、ベットで寝ていると誰かが激しくドアをノックする。 「ドンドンドン!OPEN THE DOOR!」 「誰やこんな時間に?」 小窓のカーテンの隙間から表を覗くと、どう見ても人相の悪そうなギャングが5~6人玄関前でウロチョロしている。…なんか嫌な予感。 こっちは関西弁なまりの変な英語で「What’s happen men!? I am sleeping !」と言うと、「○×△…○△× … …!!」何か言っているがロレツが回っておらず、何をしゃべっているか全く分からない。…しばらく無視する事にした。 が、しかし、「…ドンドンドン!…」「ドンドンドン…!」「お前の部屋に大事な忘れ物をした!今すぐにドアを空けてくれ!…金ならやる!!…開けてくれないと俺は殺される!」「…What??」 おいおい、ちょっと待て!夜中にドアをガンガン叩いて、殺される~!って、俺、何かしたか? お前が殺されるかどうかは俺は知らんやろ?! 俺らはただのツーリストやで!… どうやら、ヤバそうな奴らのアジトに泊まってしまったらしい。 「Hey brother ! 一体どう言う事や…! 訳をちゃんと説明しろ! Men!」 こういう時は、少しドスを効かせながら、LAなまりのギャング語で話し、語尾にMenを付けると話が早い! 相手も乗ってきて、「Hey Brother… ○×△ …」 奴が言うには、2万ドル相当のブツを部屋に隠していたらしいが、俺達がいきなり深夜にチャックインしたので、部屋に隠したままになってるというのだ。…なんでこんな事になるかな?更に詳しく聞くと、こいつらは隣の部屋を借りていて、ついさっきまで中で繋がっているこの部屋も一緒に借りていたらしい。(よく見ると部屋の壁には隣と通じるドアが付いてる!…ホンマや!) で、深夜なので誰も来ないと思い、一旦チェックアウトした瞬間に俺達がチェックインしてしまったらしいのだ。 …この時イヤーな雰囲気が漂い始める。 もし警察を呼ぶとこいつらの隠しているブツが俺らの物にされてしまう可能性があり、こいつらは警察に捕まるのを防ぐ為に、知らんと言い通すだろう。警察に散々事情徴収され拘束された挙句の果てに釈放されたとしても、出てきた時にはこいつらの恨みをかって本当に殺されるだろう。しかも明日のこっちの予定もムチャクチャになる。 しばらく考えたが、どう考えても開けた方が得なので取り引きする事にした。 「…分かった!開けたるから、取り引きしよう!1・2・3と数えるから、頭に両手を乗せて3と数えた時一人だけ入れ!妙な真似したら…!」 なんかどっかの映画で見たようなセリフだ。 「ワン… ツー… スリー!・バタンッ!」瞬時にドアを少し開け、一人だけ入れて直ぐにチェーンロック、ボディーチェックをするが武器らしいものは持っていない。しかも、俺はシャワー上がりで腰にタオル巻いた上半身裸のまま、何故か片手にはビカビカにメッキされた銀色のスチールロッドを握りしめていた。俺が初めて見た時に剣に見えたように、きっとコイツも剣刀か何かに見えるだろう。 やはり、入ってきた相手は俺の異様な姿を見て驚いているようで、剣にチラッと目をやってから視線をそらした。が、直ぐに真っ直ぐベッド横の電球の傘を調べ始めたが何も出てこない。「無い! 無い!」と急に慌て出し、次に洗面所に行くと言い出した。が、ここでまた問題が発生した。 洗面所の前まで一緒について行くと、ここから先は1人で入るから入って来るなと言う。 「ヤ、ヤバイ、もしピストルでも出されたら…俺達は金を巻き上げられ殺されるかも…」この時はかなり焦った。 少し考えたが、仕方ないので1人で行かせ、表で日本刀(いや、スチールロッド)を構えて待っていると、中から声がした。「OK I … FOUND IT!! I FOUND ITS!!!」かなり喜んでいるようで、無事に洗面所の天上からブツを見つけたようだ。何故かこちらも嬉しくなり、一緒に喜ぶ。 奴はもの凄く興奮しながら袋に入ったブツを隠し持って出てきた。 「悪かったな! Brother!これで命拾いしたよ!これは礼だ!$50」渡そうとするが、受け取って何かあればまずいので、こっちは受け取りたくない。奴からすると口止め料のつもりのようで、これで絶対にPOLICEには言わないでくれ!と言う。「No no no…」「まあ、まあ、まあ、」と大阪のおばちゃんのような押し問答を交わす。 「OK 分かった、気持ちだけで充分や!金は要らん!絶対に誰にも言わんから、頼むから早く出ていってくれ」 「分かった!!助かったよBrother! ところで、お前らもコレ要るか?」 …もうええっちゅうねん! …あっという間の出来事だった。 その後、窓から表を見ているとそのモーテルはやはりギャングの売買アジトになっており、タクシードライバーやらアベックやらが次から次へと深夜のドライブスルーで買い物を楽しんでいる。 さすが、アメリカ!車社会と言われるだけの事はある。 全国のスチールロッドファンの皆さん、くれぐれも真似はしないように…。

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