第4章 アンティークモールでの出会い

フロリダからLAまで、トラック大移動の始まり
今回は釣具メインでは無く、ショールームに使うショーケースと調度品を買うのが目的だ。各町でアンティークモールに行き探すのだが、どの店にどんな物があるかは全く解らない。町に着けばまず、イエローページでアンティークモールを探し、次に地図で回るルートを決める。後はひたすら一軒づつお店を回り気に入った物を見つけて、トラックに積み込んで行く原始的な方法だが、結局,一品モノを探すにはこの方法しか無い。しかも大方の店は夕方5~6時には閉店する為、朝~夕方までお店を回り、夕方以降に次の町へ移動し、適当にMOTEL6(一泊$15のアメリカで最も安くて安全なモーテル)を探して泊まる。 U-FALLトラック(レンタカー)が州内での移動や引越しに使われる事が多いのに対して、今回の黄色いRAIDER TRACKは全米移動用に使われる事が多い。 早速マイアミ郊外で5トンクラスの程度の良さそうなRAIDER TRACKを借りる事にした。手続きを済ませた後、いよいよ全米6000キロ走破のスタートだ!気合を入れてエンジンをかける…。 「キュルキュルキュル…ガタガタガタ…」エンジンは快適に掛かるぞ!次にアクセルを踏んで吹かしてみよう!「あれ?なんやこれ!アクセル固くて動かん!そうか、安全ロックでも掛かってるんかな!?」早速、店員に見てもらおうとフロントのネエチャンを呼んだ。「コレコレ!アクセル踏んでも動かんけど、どうやったらいいの?」」ホラね?と言おうとすると、ネエチャンが運転席で「ブルン…ブルン…ブォーン…」エンジンは良く回っている!「…あれ?おかしいな??」  ネエチャンが一言、「もっと強入れて踏め!」 …言われる通り、右足を力いっぱい踏み込むとゴォーという轟音と共にエンジンが回る。 それにしても、重い…というより、固い。この固いアクセル踏んで、ロスまで行くんか?  …いきなり不安を抱えての出発となった。


建国僅か200年程のアメリカ人は国に歴史が無い分、 歴史あるアンティーク品への愛着はとても高い。 (と言ってもヨーロッパの古物とはけた違いに新しいのだが…。) アンティークモールとは1000坪~2000坪ぐらいはあるバカ広いアンティーク専門テナントの入ったショッピングセンターみたいなものであり、各テナント出展者は場所代としてモール管理者に家賃を支払い、モール管理者は各ブースにあるショーケースのキーを預かる。モール管理者はレジ打ち業務とモール全体の宣伝をする。 マンション経営と同じでリスクも少なく安定した家賃収入が稼げる為、現在アメリカでもかなりの勢いで増えているニュービジネスだ。 出展者のほとんどが副業で、借りた自分のブースの装飾や飾りつけは自分で行い、各商品には自分のブース番号と値段を付けておく。買う側のお客さんは自分のコレクトしている商品を探しにいき、気に入ったものがあれば買う。 レジ打ちのオバさん達はレジにて売れた商品のタグを回収し台帳に記入、値札を証拠として保管しておき、持ち主に連絡する。レジ回りの人は商品知識の全く無いオバさん等がほとんどである。モールには様々なカテゴリーの出展者コレクター達が居る 空き缶野郎・コカコーラフリーク・ナンバープレート男・ブリキ玩具マニア・家具の専門家・50年代こだわりマン・農業機械マニア・タイプライターインテリ野郎・ステンドグラス&シルバーアクセサリー貴婦人・古本専門・海の男・登山家・インディアンジュエリー等ジャンルは様々で時々釣り好きもいる。


トムとの出会いマイアミ出発から数日が経過し、旅にもすっかり慣れて来ていた。場所はメンフィス郊外、いつものようにモールに出かけると、ブースの片隅に程度のいい ABUが置いてあった。何百件と見て回ってもめったに出てこないモデルなので、「このおっさんは凄いぞー」とか思いながらそのブースにへばり付いていると、後ろから「何を探してるんだい?」と声。身形のいい45歳前後の紳士が子供連れで現れた。名前はトム。僕はすかさずもっと他に商品は無いのか?とか、いろいろ聞きまくっていると、「ここに出ていない品が家にもっとあるから来るか?」とトムが言う。喜んで一緒に家に付いて行く事にした。 トムの家はかなり凝っており、ベッド、家具、セーター、野球バット、キッチン小物入れ等あらゆる本物アンティークと調度的かつ機能的なアンティーク調の新品が上手くコーディネイトされており、とにかく格好がいい!。 僕には羨ましい限りの典型的なアメリカ中流階級層だった。部屋を見渡していると、トムが大切そうにしまってあるダンボールをどこからともなく出してきた。 中にはお宝のABUリール 2600や RECORDが5台ほどと、フルーガーやミッチェルなどが数台、ルアーが多数入っている。 トムのコレクトセンスはとても良くしかも程度もいいし、中にはあまり見かけた事の無いルアー等もある。気にいった僕は結局トムのもっているコレクト品をほぼ全て譲ってもらう事にした。しばらくトムと釣り道具についてや他のアンティーク品やコレクター品について話したりしていた時だ。「俺の友達でもっと凄い奴がいるんだ。彼はアーカンサス州でも2本の指に入るルアーコレクターだよ」トムが言った。 こいつよりもっと凄い奴がいるのか!?そんな事を聞いてしまった僕は、またまたコレクト魂に火がつきだした。そして早速そのオヤジを紹介してもらう事になったのだ。