第6章 なんやこれ!?

銀色に輝くロッド 日々骨董品に触れていると、年代・素材・品質などを見極める目がだんだんと養われてくる。その日もいつものように田舎のアンティーク店を回り、調度品や家具を探していた。広い店内をぶらぶら歩いているとブースの片隅に何か自己アピールの強い特徴的な奇妙なロッドが目に付いた。「…おっ、なんやこれ!?」近づいてみるとそれは物凄く綺麗な銀色のスチールロッドだった。横にはオイルのたっぷり染み込んだ布製ロッドケースが置いてあり保管状態と程度はMINT(新品同様)状態である。 グリップヘッド根元に組み込まれているネジを回すと、ロッドがスルスルと飛び出してくる。大抵のスチールロッドはネジが錆付いて力を入れないと回らない物が多いが、このロッドは実にスムーズで、指先で軽く回すだけでスルスル~スルスルス~とまるで今現在も発売中の高級ロッドではないかと思うほど機能が全く衰えていない。ロッドフェルールに付いている細かいオスネジとヘッドに内臓されるタップが噛み合い、ヘッドやロッドを回さなくてもロッドとグリップが脱着する仕組みになっているのだ。 「なんじゃこら~」思わず叫んでしまった! 細かいネジピッチ・機能構造・組立て方式・キャスト精度・繊細な下地処理や表面処理、・パーツ素材の全てにおいてこだわりと作った人の魂が息づいている。しかもロッドの先端からグリップまで全てが完璧なメッキを施し、ビカビカに光り輝いて道具として物凄く美しい。今までにこんな綺麗なスチールロッドは見た事はない。こんな物が50年以上も前に作られていた事が信じられなかった。 度肝を抜かれ即購入した僕は帰ってからゆっくりと銀色に輝くロッドを観察し、そのディテールの良さにますます惚れこんでしまう。 今まで多種多様のスチールロッドを見てきたが、この竿は他とは全く違う。 見ているだけで何かワクワクするような気分にさせられ当時の職人やデザインした人達の熱心な姿が想像出来ると同時に「このおっさん、アホか!?どこまでこだわるねん?」とも思わせる程の創り込みだ。 この竿はそれぐらい気合が入っていた。 今までに沢山のメジャーブランド品のNIBやMINT等の程度の良いビンテージは沢山みてきたつもりだったが、メジャーでは無いブランドでこれほど手の込んだ仕上げとデザインの両方を兼ね備えた素晴らしい物がある事に正直驚かされた、と同時に、物創りの原点を感じた。 このロッドは凄い!久しぶりに興奮している。「ACTIONROD ORCHARD INDUSTRIES INC」 物には創った人の魂が入るが、このロッドほど創った人の魂が現れているロッドは他には無い。 全くメジャーでは無いブランドだが、有名メーカーには無くなってしまった創り込みと魂がある。 何か物凄い原動力を与えられた僕は、それから毎日この銀色のロッドを眺める日々が続いた。「GOT of ACTIONROD」 この時から勝手に僕の物創りの神になってしまった。