第3章 アメリカ横断の旅 |
1997年夏 あのオヤジさんから手に入れたアンティークタックルの一部は日本のコアなコレクター達に売ったのだが、大半はダンボール箱に入れてしまい込んでいた。希少品と呼ばれる物がそう簡単に見つかる訳も無く、良い物の値段は跳ね上がる一方、一度売ると次に買う時には高くなっている。あのアクエリアスのような店が他に沢山ある訳でも無く、アンティーク品の資源にも限界を感じた僕は、ある程度販売した時点で売るのを止め、保存する事にした。
OUT DOOR LIFE MAGAZINE
ルアーに混じりアクエリアスで一緒に譲ってもらった何点かのOLD雑誌の中で、特に気に入っていたのが1930年代の『 OUT DOOR LIFE MAGAZINE 』である。
名前の通りアウトドアーマン御用達といった感じの雑誌で、冬はハンティング、夏は釣りという具合で、時期によって表紙のイラストがハンターであったり、釣り人であったりと多彩でとても面白い。 恐らく1930年~1950年代にはバス釣り雑誌なんてものは他に全く無く、バス関連の唯一のバイブルがこの雑誌だったのであろうと考えられる。 ページをめくるといろいろ出てくる。その頃のロッド、リール、ルアー、船外機、バスボート等。釣り人のスタイルや道具も今とほとんど変わらない。テクニック特集では、こんな釣り方でもっと良く釣れる!とか、○○テクニック公開。メーカーの広告宣伝でも「バックラッシュしないダイレクトリール発売!」とか「軽量チューブラースチールロッド登場!」”夜釣りの王様、アーボガスト”、ボートや船外機メーカーの宣伝も面白い”軽量2馬力船外機とボートで、別世界へ…”さらに、バスを片手に誇らしげにポーズを取る釣り名人の写真etc。
道具が古いか新しいかの違いはあるものの、内容的には今の釣り雑誌と全く同じだった。
1930年代にタイムスリップ あれこれと見ている内に、僕の頭の中は完全にタイムスリップさせられてしまう。想像はどんどん膨らんで、遂には1930~1950年代を再現した本物の博物館かお店を作りたいと考えるようになっていた。でも、ビンテージの釣具は手に入ったとしても、店を作る為の本物のアメリカンアンティークショーケースがそう簡単に手に入るものではないし、ロス近郊にはレプリカは沢山あってもオリジナルはまず無い。あったとしても値段が高過ぎたり気に入ったものが無かったりと、なかなか見つける事が出来ない。当然日本にはアメリカンアンティークショーケースなんて売っていない。なんとか、本物を手に入れる方法は無いだろうか?いてもたっても居られなくなった僕はアメリカ地図を広げてみた。地図で見ると大して大きくもないし、右から左まで僅か30cm程しかない!アメリカ中探せばなんとか手に入れる事が出来るんじゃないか? 飛行機でフロリダまで飛び、大型トラックを借りて佐川急便のようにショーケースを集めてロスまで運んでこよう!ロスからコンテナに詰めて日本まで運べばいいし、途中にはアメリカ中南部バス発祥の地も沢山ある。 「もしかしたら、またアクエリアスのようないい人に出会うかもしれんなー!?」 早速LAに住む仕事のパートナーに電話。「プルプルプル…もしもし、江森くん、元気? 最近どうや? …なに?少し疲れてる! そうかー、たまにはバケーションも必要やな…今度フロリダ行くけど、一緒に来る?」 「…OK !」パートナーが決まり、早速計画が実行される事になった。「よし、行こう!」 こうしてアメリカ横断の旅が始まった。