第7章 旅の終わり

ブームの無い国
日本の25倍の国土面積と2.5倍の人口を誇るアメリカ合衆国は、建国以来多くの移民を受け入れ様々な人種の人間が住んでいる。 広い国土に多くの人種の人間がそれぞれの価値観を持って生きている完全な個人主義である。こんな国では「ブーム=流行」という事はあまり起こらない。アメリカで人気と呼ばれるものはいわゆる定番アイテムと呼ばれるもので、長い時間をかけて人気定番アイテムになるので急に売れたり売れなくなったりする事が無い。 逆にレアなアイテムはビンテージ品に代表されうるような希少品や今では手に入れる事の出来ない素材を使ったものであり、なかなか手に入れる事は難しい。レアなアイテムと人気のアイテムとは根本的に違う。 広い国に住む大陸的な国民性と、自己主張の強い狩猟民族独特の個人主義から生まれる強い個性のある特徴的な物はやがて人々に認められ定番の人気アイテムとなり、時間をかけて無くなっていった時に初めてレアなアイテムとなるのではないだろうか。 どこかの町でリプロダクションのアンティーク調家具を作る職人達と話す機会があった。彼らもアンティーク品の良い所と悪い所を熟知しており、ディーテールにこだわり忠実に再現するか、もしくはそれを改良したりして本物以上のクオリティーを目指して魂を込めて創っていた。本物にしか出せないテイストとレプリカにしか出来ないテイストを彼らは良く理解しているから良いものが創れるのだろう。 アメリカ横断の旅でマイクを含め本物志向の大勢の人々と出会い、沢山の釣具や調度品、そして珍しいアンティークショーケースを沢山入手する事が出来た。おかげでフロリダで借りた5トンRAIDER TRACKの荷台は満載になった。 この旅で名品や名作に沢山触れられた僕は本物指向を再認識させられ、今度は自らの手で彼らの心をがっちりと掴んで離さない完全なオリジナルを創りたいと考えるようになっていた。「いつかは彼らアメリカ人を唸らせる物を創りだそう」 そんな事を考えながら、最後の街ニューメキシコ州アルバカーキ-を過ぎ、目的地のCaliforniaに到着した。


■全工程:4000マイル(6400km)
■延べ日程:10日間。
■訪問都市:15州40市
■宿泊:MOTEL 6 or 9(モーテルの名前)
■車:RAIDER TRACK 5t
≪集めた品≫1800年代後半/教会チェアー×1 1935年頃/たばこ屋さんケース×1 1935年頃/宝石店ケース×1 1910年代/アクセサリー入れ×1 1935年/斜めカットのケース×2 1940年頃/ライフルケース×1 1938製/デスク×1 1938製/チェアー×1 1940年代/Winchester製ガンケース×1 1930年代/ショーケース×1 1930年代/ハンタージャケット×1 1930年代/電話器×1・タイプライター×1 Outdoor Life magazine(Fishing表紙) 1935年~1958年×全巻。 ※その他釣具多数


現在VAGABOND本店ショールームに使用されているショーケースや装飾品は全てMADE IN USAのオリジナルウェービングガラス付きです。「アンティークルアーショップ・アクエリアス」から譲り受けたビンテージタックルは当時のショーケースに陳列され、VAGABOND本店にて展示されています。