第5章 アメリカン中流階級層の人々

マイク邸訪問 「こんばんは。京都から来ました!」家のベルを鳴らし、大きな扉を開けると、中から人の良さそうな人が出てきた。「おお、君かい! 随分と遠くから来たなー!」名前はマイク。 さすがにこの家は平均的なアメリカ人から比べても結構デカイ方で、僕ら日本人にとっては夢のまた夢であるようなバカデカイ家だ! …こいつはお宝を沢山持ってるぞ!僕は直感的にそう思った。「すまないが、静かに頼むよ!今日はもうワイフが眠っているんだ…。」マイクが小声で言った。こっちに来ておくれ!いきなり2階の部屋に通された。…やはりどこの家庭でも奥さんは強いようだ。


マイク専用のコレクトルーム 部屋に通されていきなり驚いた!部屋の中央にはビリヤード台が置いてあるではないか! …そしてその上には物凄い量のルアーがメーカー別や種類別に分けられ標本ケースにびっしりと入っている。木炭作りのビリヤード台(Bronswick社製)のド真中には他を威嚇するように最も豪華で大きな額縁ケースが堂々と飾られている。中身が気になり中を覗きこんで見てみると、そこにはシェークスピアのルアーが飾ってあったのだ。てっきりへドンか何かのルアーが入っているものと思っていたが、違っていた。幾らぐらいするのか聞いてみると、既に数千ドルはすると言う。日本でも一番人気のあるへドンはどうなの?と聞いてみると、以前は少し持っていたが急に高くなり過ぎたから手放したのだと言う。


その頃アメリカではあのバスプロショップがビンテージ品を買いまくり 世界No.1のへドンコレクターMr.Crew showがバスプロショップに高値で売ったから相場が急にはね上がっていた。「あまり高いともう集める事が出来ないだろう!?それに元々シェークスピアーのルアーは作りも良く綺麗で好きだし、アメリカではへドンと変わらないぐらい価値があるしね。今はもっぱらシェークスピアー一筋に集めているよ!」マイクが言った。そして、本当のコレクターは値段があがる前になるべく沢山の品を買うのが鉄則だとも言っていた。(ある意味、日本のビンテージ相場でも同じ現象は起きているので珍しい事でもない。) 一時間ほどマイクは自分の持っているコレクションの話を色々としてくれた。「このコレクションの中で最も高価なのはどれ?」とマイクに聞くと、実はこれなんだよ…と彼は別の所に飾ってあったルアーを見せてくれた。専用ケースに入ったルアーは新品箱入りのWINCHESTERルアーだった。WINCHESTRと言えば、あのライフルで有名なメーカーだが、まさかあのライフルメーカーが昔ルアーを作っていたとは、僕は全く知らなかった。そのルアーは破格の高値で、今では1万~2万ドルはするらしい。なんとも恐ろしい話だが、それを持っている彼も凄い。アメリカでは釣りとハンティングの両方をする人も多くWINCHESTERには熱狂的なファンがいるらしいのだ。良く見てみると、細かいディテールには独特のこだわりと味付けがされており、さすがアメリカでも人気GUNメーカーだなと思わせる創りこみだった。 いろいろと話した後、僕はお礼に日本から持って来たハンドメイドルアーをひとつプレゼントした。 光栄な事に彼はそのルアーをシェークスピアの額縁に入れてくれた。 マイクのコレクションで欲しいものは沢山あったが、どう考えても直ぐに買える量と金額では無く、後日リストを送ってもらう約束で、その日はおとなしく帰る事にした。 それよりも究極のコレクター、マイクからは物凄く大切な事を学んだような気がした。